カートの中

 小児科医(日本小児科学会専門医)で小児心身症の臨床医である「ドクターれいこ」に中学生・高校生など、思春期の心と体にかかわる悩みを解説していただくことにしました。先生は国立国際医療センターで小児科研修、慶応大学小児科で小児心身症の研修を受けられ、現在複数の病院、医院で心身症外来、乳幼児健診など受け持っておられます。いまのところ典型的な悩みや疑問を編集部で用意し、これにQ&A方式で答えていただく方式を採用しており、個別の質問は受け付けていませんが、この「相談室」が受験勉強に疲れた思春期の中学生・高校生の心と体のオアシスになればと願っています。
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ドクターれいこの「思春期・こころとからだの相談室」

                           文・イラスト ドクターれいこ

<第6回>英単語が全く覚えられない〜学習障害LD
Q;英語が大の苦手で、特に単語を覚えるのが苦痛です。テストも0点なので、一学期の成績は1でした。学校に行くのも気が重いです。先生は努力が足りないというのですが、努力しても覚えられなくて・・・

発現率は小中学生の6%
A;このような訴えで病院に行こうと思う人はいないと思いますが、実は病院でも解決できることがあるかもしれません。ここでは「勉強方法」や、「正しい英語の覚え方」を述べるのではなく(それはあすなろオンラインにお任せします。)「学習障害」(ここではそのなかで「識字障害」)について知ってもらおうと思います。
 「学習障害」とは、大まかに言えば「知能は正常で、学習に障害をきたすような視力や聴力、身体の障害などがないのにもかかわらず、話し言葉や文章を理解したり用いるうえで必要な読み、書き、つづり、計算など行うに障害を示す」状態を指します。その頻度は、国や年齢により統計にバラつきがありますが、わが国では小中学生のおおよそ6%にその疑いがあるといわれています。欧米では小学生で10%前後という報告が多いようです。意外に多いことに驚いた人もいると思います。

「やる気」だけでは解決できない識字障害
 さて質問に戻ります。ここで問題となるのは学習障害のひとつである、「識字障害」です。「識字障害」とは、字や文を読んだり覚えたりするのが極端に苦手である、ということです。その頻度は欧米では10−15%であるのに対し、わが国(中国も)では1%くらいとされています。それはなぜでしょう?
 欧米で使われる言葉の代表として英語があげられます。フランス語、ドイツ語などとは多少の違いはありますが、みなさんご存知の英語と日本語を比べてみてください。日本語は一字が一音節に対応しています。(「あ」は‘あ‘と読みますね。‘い‘と読むことがないし、他のカナで‘あ‘と読むものもありませんね。)また、漢字は形から意味が推測しやすく、覚えやすいのに対し、アルファベットは同じつづりが同じ読みになるとは限らず、漢字のような形で見分ける方法がありません。また、on→no、saw→wasのように、順を入れ替えると全く意味の違った単語になるものがあるのに対し、日本語ではそういうものが比較的少ないのです。

 そのため、本来は軽度の識字障害がありながら、日本語のみを用いていたときはあまりそれが表に出ず、英語の学習をすることでその障害が表面化することが少なくないのです。よくよく訊いてみると、そういう人は初めて文章を読むときはつっかかることが多いが、繰り返し読むうちにスムーズに読めるようになる、だとか、子どもの頃に文字の覚えが多少遅れていた、などのエピソードがあるようです。
もし、「識字障害」がある場合は、本人の努力ややる気だけで問題を解決するのは非常に困難です。

早い段階での発見が大切
 本来は学習障害というのは、教育の現場から生まれた考え方なので、教育のプロである教師が、その可能性に早く気付いてあげて、フォローをしてくれれば良いのですが、現実には「やる気がない」「きちんと言われたとおりの学習をしない」と、片付けられていることが多いように思います。そのせいで不登校になったり、人間不信になったりして、問題が複雑化してしまうことも考えられます。
 自分(もしくは自分の子)が学習障害であるかもしれないと思ったら、なるべく早く鑑別診断を受けるために、まずは近所の話しを聞いてくれる医者に相談し、総合病院か大学病院の小児科にかかることをお勧めします。(たいていの大きい病院は紹介状が必要なので、最初は近所の医者に行く必要があるのです。)もしかしたら貧血(酸素が足りなくてぼーっとする)、てんかん(脳波の異常のため、意識が飛んだり、集中しづらかったりします。)などの隠れた疾患が見つかるかもしれません。脳などの異常がないことが確認されれば、そのほかの知能に障害をもたらす病気や、コミュニケーション障害である自閉症、やる気がなくなる、うつ病など、いろいろな可能性を調べてもらい(心理テスト、知能テストなどが行われます)、最終的に本当に学習障害かどうか診断してもらうことになります。

 病気が見つかれば薬や治療法がありますし、学習障害ということがわかれば、学校の先生に理解を得られやすいので、成績が悪くても責められたりすることはなくなり、むしろ、その子に合った覚え方や進み方を考えてもらえるようになります。
 この間テレビで「ありがちなドラマのシーン」をやっていて、0点を取ってくる、というシーンが出てきました。ゲストの出演者たちが「いまどき0点ってないよなあ」といっていたことにショックを受けました。いまでも0点を取ったり、評価で1をもらってしまう子どもがいることを知らないのだと思います。
 0点をとることは恥ずかしいことではないのですが、どうしてそういう結果になるのか、それを教師や親や本人が考えることが大切なのだと思います。そうすれば少なくない障害が、早い段階で発見されるのではないか、そして早い治療に繋がるのではないかと思うのです。




<第5回>健康診断の意味
Q:学校で健診がありました。どんなことをみるのですか。

A:私も高校生のとき、健診の体重測定が気になって、お弁当を半分残したりしたものでした。(無駄な抵抗でしたが。)

無理なダイエットはバツ
 
身体測定;去年より背が伸びたか、気になりますね。私たちは身長や体重のバランスが適度な範囲にあるかみています。太りすぎは見た目に分かりますが、むしろ痩せすぎのほうが心配です。皆さんは成長期なので、体重が増加していないのは、成人で言うと体重減少に等しいのです。もしも体重が増えていない、減っているようであれば、無理なダイエットをしていないか、保健の先生になど相談してくださいね。

 
内科の診察;聴診器で何を聞いているのか、おおよそお分かりと思いますが、心臓の音と呼吸の音です。学生で時々心雑音が聞こえることがあります。心臓に疾患がある場合はだいたい幼児期までに見つかっていると思います。ほとんどの場合、特に心配ないものですが、中には心臓以外の病気が隠れていて心雑音として聞こえる場合があります。心雑音が聞こえると言われたら、必ず専門の病院で原因を診てもらいましょう。それから胸を出してもらうことで、同時に他の診察もしています。まずは胸の形、漏斗胸といってへこんだ形ではないか、反対に鳩胸という、出っ張った胸の形の人もいます。また、皮膚の状態も診ています。アトピーがないか、など。何らかの手術を受けていればその跡をみることで大体どんな病気があって手術を受けたのか推測もできます。胸は日焼けの影響を受けにくいので、皮膚の状態が見易いのです。なので、医者が胸を見ていたからいやらしいと思わないでくださいね。背中をみて前かがみになってもらうのは、背骨が曲がっている側彎をみているものです。姿勢、悪くないですか?

 
耳鼻科診察;鼻の粘膜をみると蓄膿症やアレルギー性鼻炎なんかがわかります。聴力は聞こえない音の高さ(大きさ、ではなくてブーンという低い音、キーンという高い音、です)によって難聴の種類が異なってきます。最近、ヘッドホンをつけている学生さんが多いですが、音量はほどほどに。

コンピューターの使いすぎに注意
 
眼科診察;目は口ほどにものをいい、とはよく言ったもので、眼球や眼瞼(あかんベーをして見える赤い粘膜)をみるといろいろなことがわかります。アレルギー性結膜炎はないか、貧血(結膜が白くなる)がないか、などです。また、眼の位置がずれている斜視があるようだと、眼のせいで勉強やコンピューターの操作をすると疲れが溜まります。そのあるなしもみてくれます。視力も去年より落ちているようであれば、めがねを作り替えたほうがいいですね。

 
血圧;若い皆さんには興味がないかもしれませんが、なかには若いながらびっくりするような高血圧が見つかることがあります。ただし、緊張すると血圧はすぐに上がるので、血圧測定のときは深呼吸をしてリラックスしてのぞみましょう。一応、上が140以上、下が90以上のひとは、かかりつけの(または近所の)小児科や内科の先生にもう一回測ってもらってください。

 
心電図;胸に吸盤をつけて測定するので、その跡が残ったりしますが2−3日で消えますのでご安心を。心電図は奥が深くて、いろいろな心臓の情報を教えてくれます。普段気付かないような異常がたまに見つかることがあります。

 
レントゲン;若い人の場合は主に結核の有無をみるのが目的です。もちろん、心臓病や喘息、肺炎の跡などもわかります。結核なんて昔の病気とあなどることなかれ、いまでも結核の患者さんは少なくありません。一応しつこい咳が続いている人は、念のために近所の医者に相談してください。

 
おしっこ(尿)検査;腎臓の状態をみるのに手軽な検査です。女児で、生理の前後3日間のひとは、正しい結果が出ない可能性があります。蛋白や潜血がでているといわれたら、腎臓の機能が落ちている可能性があります。また、膀胱炎も考えられます。もし、糖が出ているようならば、血液のなかに必要以上の糖分が出ているということです。いずれにせよ、尿検査でひっかかると2次、3次検査があります。3次になると腎臓の機能を見るため血液検査をします。若い人の腎臓の異常は、じつは学校健診の尿検査で見つかることが多いのです。腎臓を悪いままほおって置くと大変なことになります。検査で引っかかったらきちんと2次、場合によっては3次検査を受けてください。

 
便検査;便の中に血液が混じっているようであれば、胃や腸に炎症を起こしていると考えます。便というと寄生虫の検査を想像するかもしれませんが、それは肛門にテープを貼って調べる検査でわかるものです。ちなみに、糞便を肥料にした野菜をよく洗わないで食べて寄生虫に感染する人がいますので、生野菜はよく洗ってください。

ドクターに質問しよう
 若いというのは健康、ということで、普段病院に良く行くという人は少ないと思います。学校健診は医者の診察を受ける、よい機会です。混んでいるときなどはなかなか時間が取れないこともありますが、普段健康上気になっていることがあったら、良い機会なので、ぜひ、健診の先生に質問してください。

 ちなみに医者にとっては、病気の訴えを持ってくる人より、一見健康そうな人の隠れた病気を見つけるほうが難しいことなのです。健診をできる、ということは、健康をよく知っている、ということです。反対に、健康を知るためには病気をたくさん知っていなければなりません。これは、勉強にも応用できます。正解を知るためには、たくさんの間違いを知っていなくてはならないということです。つまり、失敗をしたときはそのことで一歩正解に近づいたと解釈してめげたりしないでください。


<第4回>不本意な入学
Q:第一志望の学校に入学できませんでした。こんな学校に来るはずではなかったと考えると、学校に行く気になれません。どうしたらいいでしょうか。


居場所がない
A:もうすぐ新学期を迎えます。新しい学校、学年をわくわくして待っているひとばかりではないかもしれません、というのも、受験で不本意な結果に終わった人もいるのではないかと思うからです。

 いわゆる不登校といわれる人の中に、「本当はこんなところに入る予定ではなかった。受験のときに病気をして本命に失敗してしまった。入るつもりがなかったから、行ってもつまらないし、その学校の人と付き合う気もおきないし、もう、行くのが嫌になった。」という人がいます。もちろん、本命ではなくとも割り切って行っている人に比べればわがままに聞こえる訴えではあります。でも、理由はどうあれ、学校に行けないというのは本人には辛いものなのです。

 自分の居場所がない、それが一番の問題です。居場所というのは、机がある、ないという問題ではなく、心の居場所です。入った学校に自分で納得できないと、その学校での居場所ができないのです。


浦島太郎にならない
 とにかく私はそういうことを訴える人に、まず、教科書だけは見ておいて、その学校に戻ったときに勉強で浦島太郎状態にならないようにしなさい、と言っています。なぜなら、自分よりレベルが低いところに入ったと思っていても、学校に行かずに勉強しないと、そのレベルからも置いていかれ、ますますやる気をなくしてしまう、悪循環に入るのが目に見えているからです。そうはいってもひとりで勉強心を持ち続けるのはなかなか難しいことで、実際には塾や家庭教師の力を借りなければいけないかもしれません。
 
 それから、今の自分の学校にどんな居場所があるか、考えてみてください。勉強では、自分が得意な科目は何でしょうか。とにかく、その科目では常にトップでいようとする、そういう目標があれば、居場所ができます。または、クラブ活動でも構いません。友達に納得できない場合はまずは先生と親しくなる、という方法もあります。自分が行きたいと思っていた学校の教科書を先生にみせてそれで勉強を教わる、というのはどうでしょう。または行きたい高校、大学の入試問題を教えてもらって、中学、または高校受験は失敗したけれど次こそ志望校を目指す気持ちを高めるのも一案です。勉強の意欲があれば先生は必ずそれに応えてくれるはずです。

 友人はそのうち必ず気の合った人がみつかるものです。

人生は一回しかない
 極端な場合、家庭での居場所を確保することすら難しくなっていることもあります。つまり、家族がその学校に満足していないと本人が家族に引け目を感じ、家庭での居心地が悪くなっているのです。こういうケースは、ご両親や、ご兄弟が優秀な学校を出たりしていることが多いです。本人の価値観が、親の言うままのすりこみになっている場合、せめてだれか家族の中に味方がいれば、と思うのですが。
 上の場合と反対に、記念受験してみたら思いがけず合格し、せっかくだからと入学してみたら自分には合わなかった、でも、家族はそこに入ったことを喜んでいて、行くのが嫌とは言いづらい、そんなケースもあります。おてんばな女の子が、厳しいお嬢様学校に合わなくて悩んでいる場合など、地元の公立に変わればいいのに、と思っても、ご両親がその気になってくれるのはなかなか大変です。
 つまり、中学や高校の段階での学校選び、というのは親の意向が大きく反映していることが大きくて、本人は親の期待に添えないことで自分を許せなくなってしまっている、そういうことが少なくないのです。
 でも、自分の人生は一回しかありません。それは親のものではなく、自分のものです。また、大学であれば何度も入ったり、変わったり、年を取ってからでも、ということができますが、中学、高校時代はたいていの場合人生には1回しかありません。貴重な中学、高校時代をを拒絶してしまった場合、自分の人生の思い出にその部分が欠落してしまう恐れがあります。
 まずはいまの自分のおかれている状況をできる限り受け入れる、それが自分自身の意思であることを確認する、どうしても合わないのなら学校を変わることが可能なのか検討する、その作業をしてみてください。それから、ご両親とゆっくり話し合ってください。


<第3回>「あがる」のを防ぐには?
Q;もうすぐ受験で,面接があります。極度のあがり症なので、面接官の質問にちゃんと答えられるか心配です。緊張すると、どうしてもうまく話せなくなってしまいます。顔が赤くなるのが自分でも分かります。どうしたらよいでしょうか。

ドキドキはみんな同じ
A;実は以前、ある大学の入試の面接官を担当されていた先生にお話をうかがう機会がありました。結局、面接でみていることは、その人(受験生)がこの大学で学んでいくのにふさわしい人物か、ということのようです。もちろん学生が緊張していることは試験官には分かっています。それでも、その人が普段考えていること、その人物が何を求めてこの大学を受けたのか、試験官にはちゃんと分かるようです。緊張のあまり普段は考えたこともないような常識外れの意見を言ってしまう、ということはないもので、たとえ顔が赤くなっても声が震えていても、自分が考えていることをきちんと言えれば大丈夫、と思ってください。

 よくあるのが、自分だけが自信がなくて、まわりはみな自信たっぷりに見える、といった状況です。面接試験ではしばしば、「私を落とすような学校ならこちらからお断りよ」などと豪語して周りをけん制する人がいたりするものですが、決してそういう人が自信たっぷりとは限らないようです。入学して,その人(周りを萎縮させるような発言をしていた人)と付き合ってみると、意外に普通の人だった、という事もありました。その人もきっと緊張していたからそんな発言をしていたのだろうと後から思ったものです。変な自信をもつのもどうかとは思いますが、試験官は受験生をたくさん見ているのだから、その判断に任せようと思ってしまえば楽になるのではないかと思います。

緊張とうまく付き合う
 ちょっと話は変わりますが、以前私の外来に「人前で発言するとき緊張してしまって声が出なくなる」という相談にみえた患者さんがいました。不思議なことに,初対面であるはずの私の前ではちゃんと話ができているのです。人前で緊張するとはいっても、ある条件のときに緊張してしまうという自己暗示にその人はかかっているのだ、とわかりました。

 面接で緊張してしまう人も、「面接=緊張する自分=声が出なくなる、顔が赤くなる」という自己暗示が強い可能性があります。自己暗示には自己暗示で解決です。面接の前に体の力を抜いて、声帯の緊張も緩めるというリラックス状態になり、これなら大丈夫、と自分にいいきかせるのです。それには若干のトレーニングが必要です。普段は無意識に動かしている手足に重さを感じたり、暖かさを感じたりすることを練習してみてください。そうすると体の力を意識的に抜くこともできるようになります。声帯の緊張を抜いてきちんと声を出す、その練習ができれば大丈夫。試験前にも力が抜けている、声が出る、ということを確認すればいいのです。くだらないことだと思うかもしれませんが、練習しておくと違います。ぶっつけ本番で力を抜くことはむずかしいものです。

 緊張することは本人にとっては辛いことですが、本来,緊張はその人の能力を引き出す原動力になるものです。緊張=舞い上がる、ではなく緊張は集中力そのものです。そこにわずかな不安があると集中力が乱れて失敗につながります。むずかしいことですが、緊張をうまく活かすには不安をなくすこと、つまり自分の今までの失敗を冷静に分析してそれを繰り返さないようにするしかないのではないでしょうか。

パニックに陥らない
 また、試験中は緊張のあまり思わずミスをしてしまうこともあるかと思います。ミスをしたことに気付いたらそこでパニックに陥ったり、さじを投げたりせずに、必ずそのミスを取り返すことを最優先する、ということも大切です。人はミスをするものだ、とは言いますが、そのミスに応じたケアができるのも人ならではです。たとえば医師のミスは直接,人の命に関わります。ミスをしないことはもちろんなのですが、万が一ミスに気付いたらそれをいかにして回復させるか(隠す、とは違いますよ)という知識も持っていなくてはなりません。例えば,血圧を下げる薬を多く投与し過ぎたことに気付いたら、血圧を上げる手段をいくつか講じることが求められますし、その手段をもちろん知った上でなければ血圧を下げる薬を投与することはできません。試験も同じです。ミスをしたことに気付いたら「それに気付いてラッキー」と解釈し、取り返す手段を必ず考えてください。

 今年は寒波の影響で大雪などの地域があり、試験会場に向かうのも一苦労という方もいらっしゃるかと思います。天気状況や交通情報には細心の注意を払って、どうか悔いのない体制で臨んでください。




<第3回>受験間近の体調不良
Q;もうすぐ受験なのに成績は下がる一方、苦手な分野も克服できないし、不安でたまりません。体の調子も悪いし、最悪な状態です。


ストレスが生み出す「不定愁訴」
A;本来何らかの身体症状があって小児科の外来を訪れ、いろいろ検査したもののはっきりとした原因が分からず、精神的なことから来ているのではないかということで私の外来に紹介されてくる患者さんのなかで、受験生の立場にある人たちからこういう訴えを多く聞きます。まじめな性格で成績も優秀(本人は決して自分で優秀とは言いませんが。)、将来これをやりたいという希望もはっきりしている場合が多く、傍らからみればむしろ心配のない優等生。なのに、当事者の顔は暗く、いらいらしています。そして「不定愁訴」といわれる症状を次々と訴えます。症状だけを訴えて病院にかかると、考えられる病気に対するあらゆる検査(血液検査、超音波、頭部CTスキャン、など。極端なケースでは手術でおなかを開けて調べられた人もいます)が行われますが、「○○病」というはっきりとした診断が下りません。担当した先生も困ってしまうことがあります。

 心身症外来などで時間をかけて話を聞くうちに、話は症状のつらさから、本当に抱えている不安に移って来ます。今はちょうど志望校を絞り込み、周りの友達はみんなその目標に向かって頑張っている時期です。なのに自分だけ(と思い込んでいることが多い)が成績が下がっていく。ちゃんと夏にも勉強したのに。やりたいと思っていること(海外留学、コンピューターゲームを作る会社に入る、など)をやるにはこの高校(大学)に入るのが一番なので、ここに入らないともう私の将来はない、そこまで思い詰めています。心が苦しんでいると体もそれに反応していろいろな症状が出ることはごく自然なことです。心の苦しさを解決せずに体の症状だけ解決することは基本的にかなり困難です。場合によっては症状を緩和するために薬を使うこともできますが。
 受験というのは大変なストレスです。勉強したからと言って合格できるという保証はありません。むしろ、勉強すればするほど分からないことがみえてきたりします。もし、勉強していないことばかりでたらどうしよう、当然そう考えますね。大体こういう場合は自分の失敗体験を思い出しては、自信をなくしていることが多いようです。

絶対という思い込みを捨てる
 安易なアドバイスはできないにせよ、こう考えて欲しいと思います。絶対ということとそうでないことがある、ということです。絶対合格、という学校ならば最初から受験もありません。受験がある限りそこに入れるかどうかの保証はだれもできません。でも、ご両親の存在はどうでしょう。合格しようが不合格だろうがその存在は絶対です。あなたたちには実感がないとは思いますが、あなたたちが生まれたこと、ここまで生き延びてきたことは受験など比べ物にならない競争をくぐり抜けた結果なのです。それはご両親の愛情があったからこそのものです。たとえ、今回の受験で不本意な結果になっても、自分がひとり立ちするまでに見守ってくれる存在があるのだと思えば、ここに入らなければ一生だめになる、という発想が短絡的なものであることが分かるでしょう。また、何にも知らない人、何もやってこなかった人には不安は生じません。自分がちゃんとやってきたからこその不安なのだと理解してください。

 合格することが最終目標なのではなく、目標に向かって努力すること、そのことが今しかできない価値あることだと考えてください。結果、合格すればそれはとても喜ばしいことですが。

 さまざまな身体症状はぜひ、我慢せず、こころの不安があるのならそれも一緒に、身近な大人に訴えてください。不安を受け止めてもらうことで、どうして自分にこのような症状が出るのか、解決の糸口がみえてくることもあります。もちろん、病院の先生に相談する時も、遠慮なく抱えている不安を話してください。一番いけないのは気のせいと我慢しないことです。気のせい=軽症、ではないのです。気のせい→気から起こった体の変調→気と体と一緒の解決が必要、と思ってください。

実力発揮はバランスのよい食事から
 ちょっと話がずれますが、中学、高校の学童健診をしていると、貧血、低血圧の子どもが多いことが気になります。ちゃんと食べているか、と聞くと食べている、とはいうのですが、よく内容を聞いてみると「コンビニで弁当買って来て食べてる。お菓子も食べてるし。」などという返事が返ってくることが少なくありません。もし、ぼーっとする、モノが覚えられない、などで受験勉強がはかどらなくていらいらする人は、自分の食生活を見直してください。バランスよい食事をして貧血予防を心がけていますか?朝ごはんをきちんと食べていますか?

 また、これからはインフルエンザなどを始めとして風邪を引きやすい時期でもあります。予防注射を受けたり寝不足を避けるなど、自分でできる予防策をきちんと講じて試験に臨むようにしましょう。本番、発熱で実力が発揮できなかった、そのような事態だけは避けてくださいね。


  

<第2回>いじめ
Q;転校生のAちゃんと、席が近いこともあって仲良くなりました。いろいろ相談に乗ってあげたりしていて、Aちゃんも「私たち親友だよね。」と言っていました。なのに、突然Aちゃんからの携帯のメールに「いい子ぶらないでよ。最低。」って書いてあって。もしかして、AちゃんがBの悪口言っていたから、「そんな子じゃないよ」って言ったんだよね、それかなあ。学校でも急によそよそしくなって、私の悪口をいいふらしているみたい。なんか、学校に行きづらくなっちゃって、どうしたらいいですか。

いじめられる人は悪くない
A;携帯電話やメールの普及で、いじめがますます周りにわかりにくくなってしまいました。それから、いわゆるいじめっ子ではない、いままで仲良しだった友達が突然いじめをしてくることも珍しくありません。

 まず、はっきりいいます。いじめられるひとは悪くありません。むしろ、いじめられるひとは純粋で感受性が豊かで、人を傷つけることができない優しいこころの持ち主だ、ということが多いのです。まず、自分のどこが悪かったのか考えるよりも、どうしてAちゃんが突然こんなことをいってきたのか、考えてみましょう。もしかするとAちゃん自身がだれかに傷つけられて、その腹いせにあなたにひどいことをいったのかもしれませんね。自分が傷ついたからといってひとを傷つけることは良くないことだ、と分かっていないのかもしれませんね。

傷ついた気持ちを伝えよう
 では、それにどうやって気付いてもらえるでしょうか。それは、あなたが傷ついていることをきちんと相手に伝えること、それでも私は人を傷つけたりしないのだ、という姿勢を見せることだと思います。言葉で言うのは簡単だけれど、それを実行するのはなかなか大変です。自分が傷ついていることは、まず、身近なひと、ご両親や先生に伝えるのが一番です。なぜなら、あなたを愛し、心配してくれる存在をあなた自身が確認できることで、いくらか傷ついたこころをいやすことができるからです。その気持ちをどうやって伝えたらいいのか、一緒に考えてもらいましょう。なかには怒って相手に抗議の電話をしようとする親もいるかもしれませんね。意外に相手の親にこちらの被害を伝えると、相手の状況(実はうちでこんなことがあって、この子が不安定になっていたのです。)を教えてもらえることもあり、一概に悪いこととはいえないのですが、できれば大人の知恵を生かして、穏やかに解決できる方法を考えてもらいましょう。それから、あなた自身は悪くない、と毅然(きぜん)と振る舞うことで、Aちゃんが言いふらしている悪口が間違いだということが周りの人には分かってくると思います。

いじめる人こそ病んでいる
 Aちゃんに対してどう振舞うのか、一番難しいところですが、ここは、一歩譲って、「今回のことで私は傷ついたけれど、もし、そういわれる原因がわたしにあるのなら、どこがどう悪いかはっきり伝えて欲しい。」といえればいいですね。もしかしてAちゃんが誤解していることがあるのかもしれませんし、いじめられてもしっかりしているあなたをみて、反省してくれるかもしれません。それでも「うざい。話しかけないで。」など、言ってくるのなら、それは残念ですがAちゃんのこころ自体が疲弊して、ひとを思いやる余裕がないということなので、しばらく見守るしかないと思います。(いじめられるほうがいじめるほうを見守るなんて変な話ですが、実際余裕が無いのは‘いじめるほう‘なのですから。)

 恥ずかしいことですが、大人になってもいじめ(悪口をいったり、立場が弱い人を責めたり)をするひとがいます。でも、それで人間的な尊敬を集めているひとをみたことがありません。しょせん、そういうひと、ということは自然とわかってくるものなのです。

 最後にもう一度いいます。いじめられるひとは悪くありません。悪いのはいじめるひとです。


<第1回>自殺願望
Q1何のために生きているのかわかりません。別に、なりたいものもないし、生きていても仕方がないっていうか・・・。何となく死んじゃったほうが楽かなあ、なんて思うんだけれど。友達もいるし、これといって何がつらいとか、そういうことはないです。

死んではいけない
A1 このように思春期に生きることや死ぬことについて考えることはとても自然なことです。たとえ、強い動機がなくても、なんとなく死ぬことにあこがれたりする気持ちが芽生えたりします。おまけに、思春期はとても傷つきやすいときなので、ちょっとしたことで生きる希望がなくなったりすることもあります。質問の答えはこうです。何のため生きるのか、その答えは自分で探していかなければなりません。いま、すぐ死にたくなったりすることもけっしてあなたが変なのではなく、むしろきちんと成長している証拠だと思います。でも、死んではいけません。生きていかなければならないのです。それはなぜなのか、一緒に考えていきましょう。

思春期は準備期間
 思春期はいわば、人間としてひとり立ちするための準備期間だといえます。体は着々と成長していきます。女の子ならば、赤ちゃんを産む準備が始まります。男の子は、子供を産ませるため、女性や子どもを敵から守るため、体が変化して来ます。(生物としての変化、と考えてください。男は守るもの、女は守られるもの、という思想とは違います。)でも、人間は体に対して精神はとても複雑な成長を必要とするので、精神(こころ)の成長が体に追いつかない、アンバランスな状態になってしまいます。それに、経済的にも親に依存しないといけません。体がひとり立ちしたいのに、こころや社会的状況がそれを許さないのです。そのアンバランスの結果として、精神的不安定になったり、その不安定さが身体的な症状としてあらわれたりします。

 例えばガリガリにやせてしまっても食べられない拒食症、自分の体を切りつけてしまう自傷行為など、一見、命を粗末にしているような症状を呈する人がいます。でも、実は、ちゃんと生きたい、というメッセージの裏返しだったりします。それを、きちんと説明できなかったり、自分でもどうしてそうしてしまうのかわからなかったりするのが思春期の特徴でもあるのです。思春期を越えて成人して、初めて精神と身体のバランスが整い、生きていく強い希望や、社会人、親としての使命感が訪れます。だから、いま、あなたは生きていかなければならないし、生きていって欲しいのです。

悩みと向き合おう
 そうは言っても、いろいろな悩みが次から次に訪れることと思います。性のこと、体形のこと、友人関係、いじめ、親とのかっとう、勉強のこと、おねしょがある、人前で緊張してしまう、手を洗わずにはいられない、すぐ下痢してしまう・・・など。そんな、なかなかひとにいえない悩みを解決するお手伝いができないかと考え、このコーナーを開設しました。また、このコーナーをご覧になっている中高生の保護者の方の疑問(うちの子は学習障害ではないのか、子供が喫煙をしているがどう指導したらよいのか、異性との交際はどこまで許せばいいのか、など)についても、解決できる場を作っていきたいと考えています。もちろん、内容は中高生の方々にも役立つ、分かりやすいものにします。

 これから月一回のペースでいろいろなテーマについて、この相談室でQ&A方式で連載していきます。

注;なお、この相談室では思春期を中学生、高校生としております。(一般的には小学校高学年から22歳くらいまでと考えられています。)

→ドクターれいこの経歴

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